雪板について

雪板とは、スノーボードとは違いビンディングもエッジもついていないボードのことで、その乗り心地はまるで雪上のサーフィン。スキーやスノーボードと比べると冬のアクティビティとしてはまだまだ認知度が低いが、現在北海道、東北を中心として雪板の魅力に憑りつかれる人が続出しており、その人気は爆発的に高まってきている。

雪板最大の魅力は、なんといっても自らの手で作ることにあり、自分が乗りたい板のイメージをそのまま自分で作って形にできる喜びは、スキーやスノーボードではなかなか味わうことができない。今回の「なごり雪」は、1泊2日で「作るから遊ぶ」までを体験することができる貴重なイベントのため、地元だけでなく、札幌や旭川など遠方からも多くのゲストが訪れる。

春を感じさせる暖かな日の正午過ぎ、ゲストが集まり最初に行うのは雪板のクラフト。
まずは予め用意されたベースデッキから好きな板を選び、ジグソーで自由にアウトラインを切り出す。

その後切り出した板の表面、裏面、横面を丁寧にヤスリをかけ滑らかにし、それぞれ3～4回ニスを重ね塗りして雪板の原型を作り、出来上がった板に滑り止め用のデッキテープと流れ止めのリューシュコードをつければ完成となる。

雪板の制作は2組に分かれており、制作していない組は近くの山で試し乗りを楽しむことができる。自分の滑りの感覚をその場で制作に活かせるのはまさに雪板ならではの体験である。

クラフト体験が終わると、すでにあたりは薄暗くなりはじめている。ゲスト全員で完成品とともに記念撮影をし、明日の自身の滑りへの期待と不安が入り混じる中、今夜の宿舎に向かった。

迎えた翌朝、良く晴れた氷点下の雪原に出ると出発地点にはすでにゲストを乗せるための大型のキャット(雪上車)が待ち構えていた。10人乗りのキャット(雪上車)に昨日自らが作った雪板と荷物を詰め込み、誰も足を踏み入れていないピヤシリ山の中腹へ向けてスタートする。

約30分ほどかけて山の中腹に到着し、常設の山小屋に荷物をおくと、いよいよガイドの案内のもと雪板の体験場所にむけて春のザラメ雪を登り始める。しばらく上ったところで麓を見渡すと、そこには息をのむ程のパノラマが広がっていた。

穏やかに溶けていく正午のザラメ雪の軽やかさを満喫しながら自ら作った板で滑り降りると、はじめての雪板体験で少し緊張していたゲストたちも、春を感じる陽気と道北の絶景を前に自然と笑顔がこぼれ出した。

夢中になって滑っていると、スタッフからお昼ご飯の合図が。
良く晴れた空の下、ガイド特製の昼食が次々と提供される。クラッカーにチーズとジャムを乗せた前菜、地元食材を使ったトルティーヤ、暖かなスープ。。。料理人の腕も確かだが、雪遊びの後で食べるご飯の美味しさは子供の頃から変わっていない。

そして昼食を終え最後の一滑りを楽しむと、山小屋の近くには迎えのキャット(雪上車)が待機していた。イベントの名のとおり、ゲストはピヤシリの雪を名残惜しそうに見つめながらもキャット(雪上車)に乗り込み、2日間の「なごり雪」は終了した。

自ら作った雪板を担ぎながら春の雪山を登る。
息をのむ程のパノラマと穏やかに溶けていく正午のザラメ雪の軽やかさを満喫しながら滑り降りる。
春の気配を感じる瞬間に心を和ませて。
「なごり雪」が終わると、道北には遅い春がようやく訪れる。今度は夏に向けて終りのない冒険が始まるのだろう。