INTERVIEW #01

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PROFESSIONAL NATURE GUIDE OF RIVER TRIP CAMEL

river trip CAMEL

代表 辻 亮多

徳島県生まれ。道北の水辺をフィールドとするアウトドア・ネイチャーガイド。幼少のころから川や山に慣れ親しみ、高校時代から始めたスキーをきっかけに大学は旭川へ。卒業後は釧路川でガイドの仕事を始める。2014年より美深町に拠点を移し、独立。現在は天塩川、名寄川、朱鞠内湖などでカヌーやドリフトボードを使った川下りやダウンリバーフィッシングのツアーを通じて、北の自然を感じる水上の旅をガイドする。フィールドをじっくりと味わえる、ワンランク上のガイドに定評がある。

道北の力強い自然の中で、
シンプルに暮らすような旅を。

 波立つ川の瀬を乗り越えて少し進むと、「うまく流れに乗れましたね」と振り返って声をかけてくれた。その笑顔をみるとこちらもほっとして、知らず知らずのうちに力が入っていた身体がじんわりと溶けていく。声をかけてくれたのは辻 亮多さん。夏は天塩川とカナディアンカヌーをメインに、数時間のコースから数泊のキャンプまで幅広くガイドするネイチャーガイドだ。

 
 彼のガイドはとても不思議だ。ゲストを客として扱うのではなく、「共に川を下る者」として扱ってくれる。「カヌーそのものよりも、川を下って旅をして、『水辺の暮らし』をしてもらいたいと思っているんです。カヌーはその道具なんですよね。自分の力で漕いで、大変なことも楽しいこともじっくりと味わいながら、土地に入っていく。そのほうが、この土地らしいんですよ。」

 
 徳島県出身で、釧路川でガイドの経験を積んできた彼によると、道北の自然は「そっけない」のだそうだ。南の地域の川が明るく開放的で、仮にカヌーがひっくり返っても笑いあえるような川だとすると、天塩川は無骨で、冷たくて、近づいても突き放されるような、男気を感じる川。大きさと深さと渋い味わいを、ただ黙って体現するそのたたずまいに、多くのカヌーイストやフィッシャーたちが惹かれているのだ。

 「川では、ヒマだなと思うくらい長く時間をとってあげるのがおすすめ。川の流れ、開放された空間、河原での時間と雰囲気をゆっくり味わう。ぼくがコーディネートする数泊の旅だと、1日目はほとんどなにもしないんです。都会から来たゲストはそれに焦っちゃうんですけど、そういうときはとにかく焚き火の近くに座ってもらって、コーヒーを飲んでもらいます(笑)。薪を集めて、火を起こして、ご飯をつくって、食べて、飲んで、寝る。それだけで十分。少しずつ『川時間』に自分を慣らしていくのも必要ですし、余白をしっかりとることで目線が変わり、感じられることも変わってくるんです。」

 
 火の暖かさ、水の大切さ、仲間がいる心強さ、自分のあわてんぼう具合。いつもと違う場所、しかもこの力強い自然の中で生活をしてみるという非日常は、気持ちや感覚を解放し「生きている」自分を浮き立たせる。

 
 「カヌーって、人生と同じだと思うときもあります。川をよく見て、無理して悪い流れに進まないとか、謙虚に流れに合わせていくとか、周りの状況を感じるとか。もちろん、攻めるときや勇気を出すときもあって。そのバランスがおもしろいんですよね。」パドルをかいて移動し、最小限の荷物から住まいを作り、食事を作り、自分の身体をフルに使って暮らす。カナディアンカヌーでの川下りは、アクティビティではなく「シンプルに生きる旅」なのかもしれない。

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